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『収容所から来た遺書』(文春文庫)辺見 じゅん 著

帰国へダモイ」という希望

「大東亜戦争」と言われる日本と連合国との戦争は、1945年に「終戦」を迎えました。
しかし、国家が降伏を宣言した時に、戦争から兵士たちが解放されるわけではありません。
戦争終結後も戦争状態を生きなければならなかった人たちがいました。
その代表が、捕虜になった人たちです。
とりわけ過酷であったことが知られるのが、ソビエト連邦に投降し、強制収容所(ラーゲリ)で長きにわたり抑留された兵士や民間人です。
いわゆる「シベリア抑留」ですが、実は僕の祖父も日本軍兵士として出征し、シベリアで抑留されていました。
祖父は戦争の話をしたがりませんでしたが、とりわけ収容所の生活については祖母にも話さなかったようです。
終戦間近の1945年8月に、ソ連軍は中立条約を破棄して満州や樺太などの日本領内に侵攻しました。
もう日本軍に抵抗する力はなく、投降する兵士も多数出ました。
ソ連に抑留された日本人は、厚生労働省のレポートでは57万とされていますが、70万を超えるという説もあります。
ただでさえ猛烈な寒さに襲われるシベリアで、満足な食事も得られずに厳しい労働に従事させられたため、
本国に帰ることなく亡くなった人は最低でも5万5千人に上ります。