南井三鷹の文藝✖︎上等

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芸術疎外論【その2】

ヘーゲルあってのマルクス

前回の記事では、マルクスの疎外論の評価がどのように移り変わっていったかを見ていきました。
そこで多少は疎外論の輪郭は示したのですが、疎外論そのものについての本格的な考察を後回しにしてしまいました。
これから芸術創作にとって疎外論が持つ意味を探求したいと思いますが、
マルクスの『経済学・哲学草稿』を読んでいく前に、どうしてもヘーゲルの疎外論を見ていかないわけにはいきません。
『経済学・哲学草稿』の第三草稿には「ヘーゲルの弁証法と哲学一般への批判」という章があるのですが、
マルクスの疎外論にはヘーゲル哲学の批判もしくは継承という面が強く出ています。
ものすごく簡単に整理すれば、
まずヘーゲルの疎外論があって、それを批判するフォイエルバッハの疎外論があり、それを受けてマルクスが自分の疎外論を発展させた、という流れがあります。
つまり、マルクスの疎外論には、ヘーゲルの影響とフォイエルバッハの影響とが見られるのです。


マルクスが自立した思想家になったのは、ヘーゲル左派(フォイエルバッハ)の影響から抜け出した後である、という立場が、
疎外論を未熟な時期の思想として軽視する見方を生み出したことには前回触れました。
僕もフォイエルバッハの影響に関しては、のちのマルクス思想に重要な役割を果たしたとはあまり思わないのですが、
ヘーゲルとなると話は別です。