南井三鷹の文藝✖︎上等

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千葉雅也に見るポストモダンの権力構造【付録】

ポロリ必至の「放言だらけの大座談会」

さて、ここからは特別コーナーです。
ポストモダン的主体についてはだいたい総括できたので、その代表たる売文研究者と癒着した「現代思想」という雑誌の「放言だらけの大座談会」を楽しむことにしましょう。
(そこのお父さん、不用意な発言がポロリすることもありますよ!)


ポストモダンの相対主義が、たった一つの現実や真実をいたずらに複数化し、真実の価値を貶める「ポスト・トゥルース」状況を生み出したことは、
利権から自由な知性を持つ人なら誰でも思い当たる事実です。
この事実を認められないのは、ポストモダン思想を生業にしているポストモダン研究者やポストモダン作家だけなのですが、
青土社はわざわざそのような「抵抗勢力」を集めて、放言だらけの居酒屋談義レベルの座談会を一般商業誌に掲載しています。
全体的に読む価値がない特集なのですが、今回は千葉雅也が参加した「現代思想」2021年6月号の座談会を取り上げて、
僕が定義したポストモダン的主体の有り様を実践的に確認してみようと思います。
(※真実を提示することを「ゲス」だと感じるセンシティブな方は、この先を絶対に読まないでください)



千葉雅也に見るポストモダンの権力構造

権力化した旧メディアの落日

2021年の現在、東京オリンピックの開催が迫る中で、新型コロナ(COVID-19)の感染状況の悪化が続いています。
思うような経済活動ができない人も多く、失業も増えていますが、日経平均株価は近年にない高値をつけています。
つまり、実体経済の現場は不況に苦しんでいるのに、金融経済だけはバブルの好景気にあるのです。
このような状況を端的に表現するならば、「階層分断」ということになると思います。
新型コロナの猛威は、日本社会で広がりつつあった経済格差の問題を、階層分断にまで高めつつあると思います。
しかし、この階層分断は単純な経済格差にとどまりません。
生活の現場である「現実」と人々の社会ネットワーク上の〈思念現実〉との分断が進んでいるのです。


このような「人間の生活現場」と「資本のネットワーク」の階層分断は、あらゆる場面でヴァリエーションを変えつつ再生産されていくことになります。
たとえば世代間格差です。
とりわけ人間を相手にする接客業は新型コロナの影響をもろに受けていますが、接客業で働く人たちは主に若い世代です。
それに対して「資本のネットワーク」に属するテレワーク世代は中堅世代が多く、さらに年金世代になれば大部分ステイホームが実現できるわけです。
それが旧メディアと新メディアとの分断を後押ししています。
テレビなどのステイホームメディアは高齢者ばかりが見るようになり、出社する世代はモバイル端末を見ることになります。
テレビや出版などの大手マスメディアは、もう10代20代の人たちにとって価値基準になる重要な情報源ではなくなってきています。
このままでは旧メディアは将来的に消滅することになるでしょう。
旧メディアは既存のお客さんをとどめる以外に手段がないので、旧世代の人々にウケるものを提供していきます。
その結果、旧メディアは「大本営発表」と「ノスタルジー」という商品しか提供できなくなってしまいました。