- 2023/05/14
- Category : 南井三鷹の【評論】
老いてなお「ニューウェーブ」の日常
ポップ文学が新しかった時代
1970年代に政治の季節が衰退し、80年代になるとバブル経済を背景として、消費文化が日本社会を牽引するようになりました。
音楽ジャンルでは、湿った「負の心情」に寄り添う歌謡曲や演歌より、
CMやドラマを彩る「軽快な」ポップ・ミュージックが主流になりました。
それと歩調を合わせるように、文学市場でも消費に適した「大衆的」な文学が求められていきます。
それまでの文学は、現実の重苦しい問題を意識させる堅苦しいものであったため、
「ポップ文学」は新しいスタイルだと信じられて、40年を経過した現在にまで至っています。
その結果、「ポップ文学」は、自覚なく同じ話を反復する、痴呆の初期症状のようなマンネリに陥っているのですが、
消費以上の文化的価値を持たない社会では、若さを失った老人たちがいつまでも「ポップ」に執着し続ける痛々しさを目にするほかありません。
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