南井三鷹の文藝✖︎上等

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アドルノの文化産業批判【前編】

文化産業とは何か

普通に現代思想の本を読んでいても、「文化産業」という言葉を目にすることは、珍しいのではないでしょうか。
初めて聞いた、という方もいると思います。
この言葉は、フランクフルト学派に属するマックス・ホルクハイマーとテオドール・アドルノの共著『啓蒙の弁証法』(1947年)のⅣ章「文化産業」で用いられたものです。
「文化産業」の章は大衆文化(消費文化)に対する本質的な批判になっているので、
消費資本主義に依存した私たちにとっては、かなり耳が痛い内容です。


ホルクハイマーとアドルノが「文化産業 Kulturindustrie」と呼んだものは、複製を基盤とした大衆消費文化の生産者(生産事業者)にあたります。
今で言えば、市場にある文化的な生産物のほとんどが文化産業の手によるものです。
そんな文化の担い手が、なぜ批判されなければならなかったのでしょうか。
簡単に答えるならば、経済システムによって流通する文化生産物は、文化である以上に「商品」でしかないからです。
文化産業には、大衆向け文化を通して人々から主体性を奪い、社会体制にとって都合の良い「労働者」を作り上げる役割があります。
つまり、文化的商品﹅﹅には労働者を支配する側面が隠されているのです。