南井三鷹の文藝✖︎上等

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アドルノの文化産業批判【後編①】

文化産業による知性の排除

これまで『啓蒙の弁証法』(1947年)を読み解きながら、アドルノの文化産業批判をアップデートしてきましたが、今回はその完結編です。
文化産業は事前に想定された売り上げの確保を「予定された世界」と見なし、
「予定」がそのまま実現されることを「秩序」だと考えています。
つまり、電車が時刻表通りに狂いなく運行されるような世界を規範としています。
未来とは、将来の利益が不安定になるような予定外のものであってはならないのです。
そのため、文化産業は大衆のニーズを掘り当てる「作品=商品」を生み出す方向から、
自分たちが売り出したものを「予定された」とおりに大衆に買わせるという方向へとシフトしていきました。
事前のマーケティングで「予定された」とおりに商品が売れてくれたら、企業としてこれほど安心・安全なことはありません。
とりわけ、景気後退局面であれば、なおさら心強いことでしょう。