南井三鷹の文藝✖︎上等

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アドルノの文化産業批判【後編③】

タダより高いものはない──広告権力

『啓蒙の弁証法』の文化産業の章の最後になって語られるのが、文化産業と広告との関係です。
少し考えればわかることですが、文化産業が売り出す作品=商品は、その内容を十分に味わう前に料金を支払うことになる場合が普通です。
たとえば見終わった後に映画料金を払ったり、読破した後に本の代金を払ったりすることはありません。
内容がよくわからない状態で購入するのであれば、購入にはギャンブルの要素があるわけですが、
競馬に予想屋が欠かせないように、商品の「評価」をしてくれる広告(紹介記事を含む)の役割が重要になってきます。
そのため文化産業は、商品の「評価」に関わる広告(紹介記事)を業界のコントロール下に置いて、消費者に自分たちが売りたい商品を購入させるよう誘導していくことになります。
(当然ながら、商品購入にマイナスとなる正論を、消費者が信頼することを彼らは恐れています)