- 2019/07/27
- Category : 【逸脱書評】その他
『日本語と西欧語』(講談社学術文庫) 金谷 武洋 著
日本語に主語はない
本書は講談社メチエの『英語にも主語はなかった』(2004年)を原本として、加筆修正された文庫版です。
著者の金谷はカナダに移住して、モントリオール大学東アジア研究所の日本語学科で日本語教師を長年務めていました。
どうやら日本語学のアカデミズムの外部にいる人のようです。
金谷の論の骨子は「日本語には主語がない」ということにあります。
権威化した日本語文法では主語は存在することになっているので、金谷はそれに真っ向から反対しているわけですが、
ほとんど同調する研究者がいないらしく、彼に先行して「主語廃止論」を主張していた三上章という存在がしばしば取り上げられています。
三上は高校教師(どうも数学教師だったらしい)の立場で『現代語法序説』(1953年)を書いたのですが、
主流に反対する立場の上にアカデミズム外部の人間であったため、「黙殺」されたと金谷は述べています。
国語学界の排他的な「村の論理(差別体制)」がそこに見えると言うのです。
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