南井三鷹の文藝✖︎上等

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なぜ日本では高度情報技術と消費社会の批判は歓迎されないのか

マス消費者を操るテクノロジーとイデオロギー

先頃、ドイツ現代思想の思想家ビョンチョル・ハンの『情報支配社会』(2021年)の邦訳を読みました。
現代社会の「肯定性の過剰」を取り上げた『疲労社会』(2010年)と『透明社会』(2012年)に続いて、
この本では「デジタル情報体制(Infokratie)」の支配を切れ味鋭く批判しているのですが、
ハンの優れた考察が日本の読者に響くかと言えば、極めて怪しいと悲観せずにはいられませんでした。


ズバリ言ってしまいますが、日本ではメディア技術の批判は歓迎されないのです。
書店を見回してみれば、高度情報技術を批判する本は、海外の翻訳ものがほとんどです。
たとえばアンデシュ・ハンセンの『スマホ脳』(2019年)は、日本でベストセラーになりましたが、
このようなスマホ批判の本は、不思議と著者が外国人なのです。
どうやら日本の出版人やマスコミは、高度情報技術や消費社会の批判を、自分ではやりたくないようなのです。