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イワン・カラマーゾフ「大審問官」の射程【後編】──あるいは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』について

享楽の管理

前回に引き続き『カラマーゾフの兄弟』に収められた劇詩「大審問官」を読んでいきます。
「大審問官」は、カラマーゾフ三兄弟の次男、イワンの悪魔的思考によって生み出された問題作です。
その舞台は16世紀のスペイン。
そこに不意にキリストが現れ、死者を生き返らせます。
大審問官はすぐさまキリストを捕らえさせ、牢の中で沈黙する相手に語りかけます。
キリストの教えは人間の「自由」を価値とするが、人間に「自由」は重荷でしかなく、むしろキリストが「奇蹟」によって人間を服従させるべきだった、
人間は個々の「自由」よりも、みんなで同じ対象に服従する方を望んでいる、
キリストがそれを実現しないので、大審問官が神の代理人として、「地上のパン」を与えて民衆を服従させ、彼らの望みを叶えている、
こうキリストを問い詰めながら、大審問官は自らの民衆支配を正当化するのです。