南井三鷹の文藝✖︎上等

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ヴィリリオと〈総力戦テクノロジー〉【その1】

誤解された思想家

ポール・ヴィリリオの名前を聞かなくなって久しいですが、2018年に亡くなったことで、ますます過去の人になろうとしています。
日本ではヴィリリオの翻訳書が多いわりに、ヴィリリオに関心を持つ人はあまり多くありません。
人気の〈フランス現代思想〉に属しているわりに、そもそも概説書がほとんどないですし、
翻訳者のほとんどがいわゆる有名大学の研究者ではありません。
おそらくヴィリリオが建築家であり、アカデミックな研究者でないことが影響しているのでしょう。
そんなマイナーな存在なのに、日本でヴィリリオの翻訳書が多いのは、
日本で大人気のドゥルーズ=ガタリの双方と交友関係を持っていたからだと思います。
ヴィリリオはドゥルーズ=ガタリの著書で言及されているだけでなく、ドゥルーズと個人的な付き合いもあった人です。
ガタリとは一緒に自由FM放送局「ラジオ・トマト」を立ち上げています。
しかし、僕自身はヴィリリオを読んでいた時に、ドゥルーズ=ガタリを意識することは全くありませんでした。
日本のドゥルーズ学者がヴィリリオに特別な関心を抱いたこともなかったと思います。