南井三鷹の文藝✖︎上等

Home > ブログ > 2019年03月07日の記事

『現代詩試論/詩人の設計図』(講談社文芸文庫)+『連詩の愉しみ』(岩波新書)大岡 信 著

22歳という早熟

本書は2017年に大岡信が亡くなって、2か月後に刊行されました。
彼は詩人なのですが、それ以上に詩論を高く評価する人の方が多いように思います。
朝日新聞に連載されたコラム「折々のうた」は、1979年から2007年まで28年にわたって続けられたので、その印象がどうしても強いこともあるのでしょう。
父の大岡博が歌人だったので、和歌に詳しいのはその影響があったのだと思われます。


本書には1955年の『現代詩試論』と58年の『詩人の設計図』の2冊がまとめて収録されています。
この中の最初の論考は「エリュアール論」で、次いで「現代詩試論」となるのですが、初出を見れば大岡が21歳と22歳の時に書かれていることになります。
その年齢の若さにも驚きを禁じえないのですが、
一生の仕事を俯瞰する時期に、若書きの詩論が再刊されたことを考えると、いかに大岡が評論家として早熟であったかが理解できるのではないでしょうか。